扁額・勅額を巡る古都鎌倉|権力者(天皇や将軍)と寺院の関係を知る

扁額・勅額を巡る古都鎌倉|権力者(天皇や将軍)と寺院の関係を知る

2019-12-05

今回もかなりマニアックな縛りで「扁額」です。
有名寺院の説明板を見ると「この扁額は○○天皇の直筆です」とか書いてますね。

「ふーん」で終わらすのは勿体ないので、深堀りしてみることにしました。

扁額・勅額とは

扁額は、建物の外や門・鳥居などの高い位置に掲げられる看板ですね。

そして、天皇などの為政者が国内の寺院に与える直筆の扁額のことを「勅額」と言うそうです。
為政者(いせいしゃ)は、政治を行う者。政治上の責任者。政治を司る立場の者。という意味

鎌倉の寺院にはこの勅額が大寺院に多くあるのでそれを見て行こうと思います。

巨福山建長寺

建長寺の山門には「建長興国禅寺」と書かれた扁額があり、後深草天皇の宸筆です。きれいな字ですね ^ ^
建長興国禅寺は、寺号の正式名称です。

後深草天皇の勅願寺になって発展したそうですよ。
 ※勅願時:時の天皇・上皇の発願によって創建された寺

後深草天皇

1243年~1304年。第89代天皇。後嵯峨天皇の皇子。

父で第88代天皇の後嵯峨天皇の子には、鎌倉幕府6代将軍「宗尊親王」、後深草天皇(持明院統)、亀山天皇(大覚寺統)がいる。
後深草(兄)・亀山(弟)の両天皇は同じ中宮から生まれている由緒ある血筋。
宗尊親王の母は典侍(ないしのすけ|女官)で、異母兄。

父の後嵯峨天皇が弟の亀山天皇を寵愛したので、兄弟間で対立、持明院統と大覚寺統の対立が生じた。
その対立で後深草上皇方の関東申次の西園寺実兼が北条時宗と折衝している。

そんなこんなで、鎌倉幕府と結構深い関係がある天皇だったんですね。

ちなみに「とはずがたり」。
後深草院に仕えた女房「後深草院二条」の自伝。15才年上の後深草院や西園寺実兼、亀山院のとのドロドロ関係などが綴られてますよ。

また、蘭渓道隆に大覚禅師という日本初の禅師号を与えたが後宇多天皇

後宇多天皇

1267~1324年。第91代天皇。亀山天皇の第二皇子。後二条天皇(94代)後、醍醐天皇(96代)の父。
この時期に元寇が発生。

後宇多天皇の時は亀山天皇が院政を行ったが、後二条天皇の時は後宇多上皇となり院政を実施。
大覚寺を御所にしたため大覚寺殿とも言われ、大覚寺統の皇統。

大覚禅師の「大覚」って大覚寺統から来てるのかもしれませんね。

瑞鹿山円覚寺

円覚寺には山門と仏殿両方の扁額が勅額です。

三門

円覚寺の山門には「円覚興聖禅寺」 と書かれた扁額があり、伏見上皇の宸筆です。
円覚興聖禅寺は、寺号の正式名称です。

伏見上皇

1265年~1317年。第92代天皇。後深草天皇の第2皇子。持明院統。
北条時宗との折衝のおかげで持明院統と大覚寺統が交代で天皇を出すようになり、亀山-後宇多と大覚寺統が続いた後に皇位についた。

仏殿

円覚寺の仏殿には「大光明寶殿」 と書かれた扁額があり、後光厳天皇の宸筆です。

後光厳天皇

1338~1374年。南北朝時代の北朝(持明院統)第4代天皇。
後醍醐天皇の失脚を受けて、足利尊氏と義詮に擁立されて即位。

天照山光明寺

光明寺の山門には「天照山」 と書かれた扁額があり、後花園天皇の宸筆です。

後花園天皇

1419年~1471年。第102代天皇。
1438年永享の乱が起こったのがこの時代。朝敵制度が60年ぶりに復活し朝廷権威の高揚を図った。

永享の乱:4代鎌倉公方「足利持氏」と関東管領「上杉憲実(山内)」の対立で、6代室町将軍「足利義教」が持氏討伐を命じた事件

また、10月に行われる「十夜法要」。勅許を与えたのが後土御門天皇(後花園天皇の第一皇子)。
光明寺に関東総本山の称号を与えて勅願所に定めた。

後土御門天皇

1442~1500年。第103代天皇。父は後花園天皇。応仁の乱の時代。
御土御門天皇はかなりの仏教徒で、荒れた世の中は自分の行いのせいと考えて阿弥陀仏の慈悲に希望を託したと。

阿弥陀仏と浄土宗の光明寺が繋がってきますね。

東光山英勝寺

英勝寺の山門には「英勝寺」 と書かれた扁額があり、後水尾天皇の宸筆です。※重要文化財

後水尾天皇

1596年~1680年。第108代天皇。後陽成天皇の第三皇子。
妻(中宮)が2代将軍徳川秀忠の5女の和子。徳川家とガチガチの親戚です。

1615年には「禁中並公家諸法度」が、徳川家康を中心に公布された時期。

徳川家に関係のある英勝寺に直筆の扁額があるのも、なんとなく理解できますね。

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案内板だけ見てても、何故この天皇が?って思ってましたけど、当事者の親子関係や、即位した時代、関係した人物などをおぼろげながらでも理解していくと、共通点が見えてきますね。

そして、暗記なんかせずとも、頭に自然に残っていきますね。

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