目次
椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)
椿説弓張月は、江戸時代後期に戯作者の「曲亭馬琴(滝沢馬琴)」が書いた長編小説。
南総里見八犬伝と共に、曲亭馬琴の2大長編小説です。
保元物語に登場する、弓の使い手「源為朝(鎮西八郎為朝)」を主人公に、琉球王国開闢まで描いてしまう、スケールの大きい物語になっています。
本来は、保元の乱で負けた源為朝は伊豆大島に流罪となり、そこで亡くなったとされていますが、物語では琉球まで逃げて、琉球の争いを鎮めて、子の舜天丸が琉球王国の王に付いてしまいます。
源為朝ファンは絶対に読んでおきたい一冊です。
超あらすじ まとめ
ここでは、簡単に4つのステージに分けて、あらすじと個人的に気になったポイントを纏めてみました。
九州ステージ
源為朝は小さいときに九州へ送り込まれます。
為朝の別称「鎮西八郎為朝」。鎮西は九州のこと、八郎は父為義の8男から来ています。
送り込まれた理由は、当時権勢を誇っていた信西入道に恥をかかせるような事を言って、処罰を恐れた父為義が、為朝を遠い九州に逃せさせたことになっています。
為朝は九州で、物語の最後まで味方になる人物「八町礫の紀平治」や、子「舜天」を産む妻「白縫姫」と出会います。白縫姫の父は阿蘇の領主ということで、九州の中でも、大分・阿蘇周辺がゆかりの地です。
源為義 阿曾三郎平忠国
┣-----┓ |
源義朝 源為朝=========白縫姫(正室)
↑ 仕える |
紀平治 舜天
※系図が崩れる場合は、画面を横にしてご覧ください
八町礫の紀平治(はっちょうつぶて の きへいじ)
紀平治は椿説弓張月の最初に登場し、機会があれば立派な主君を持ちたいを思っており為朝と主従となることを誓い、最後まで為朝の為に戦う人物。為朝も信頼を置いています。
また琉球ステージでの戦いでも、物凄いキーマンとなります。
<琉球ステージ>
或る男(紀平治)=======阿公(くまきみ)
|
毛国鼎(もうこくてい)=====新垣(にいがき)
┏---╋---┓
鶴 亀 赤子
※系図が崩れる場合は、画面を横にしてご覧ください
為朝に信頼された紀平治は舜天の養育係を任せられ、後半、八幡太郎義家の神仙に「汝は若君(舜天)を養育して時を来るのを待て。それまでに武芸を教え、兵法を習わすがよい。ここにある兵書は八幡太郎義家が大江匡房より伝授を受けたもので、平治の乱と時に源義朝が持っていて、彼が討たれたとき、人の手に渡っていたモノを自分が買い取った」という内容が出てきます。
大江匡房の後裔は、あの大江広元。平治の乱や源義朝なんかを絡めてくるのも、椿説弓張月ならでは。
京都ステージ(保元の乱)
鳥羽上皇が無くなり、崇徳上皇と後白河天皇が対立した保元の乱が起こり、弓の達人として九州にいた源為朝は、崇徳上皇方についた父の源為義に呼び戻されました。
しかし、平清盛や兄の源義朝のいる後白河天皇側は勝利し、父為義は処刑、源為朝は逃亡中につかまり、伊豆大島に島流し(流罪)となりました。
ここでのキーマンは崇徳上皇。
以降、源為朝は崇徳上皇が葬られた讃岐に行ったり、ピンチを迎えた時に崇徳上皇の御霊に救われたりします。
伊豆大島ステージ
伊豆大島に流罪になった源為朝。ここで自害(享年32)と伝わりますが、椿説弓張月では八丈島など伊豆七島を支配し、かつ、父の仇、平家討伐の準備を着々と進めます。
伊豆大島は藤井三郎忠重が支配していたのですが、島民を虐げ恨みを買っていた所、為朝の武勇を知った島民らが為朝の元に集まって忠重を降伏に追い込み、伊豆大島は為朝の支配下になりました。
他にも、三宅、新島、神津、利島、御蔵の5島も支配下にしています。
また、さらに奥の島へも探検しに行き、男女が別々に住む島(女護島、男の嶋)の問題を解決します。
<伊豆大島> <(女護島)八丈島>
藤井三郎忠重←監視役 東七郎三郎(のち鬼夜叉)
| |
簓江(ささらえ)===源為朝========にょこ
┏--┻--┓ ┏-┻-┓
為丸 朝稚 嶋君 太郎丸 次郎丸
※系図が崩れる場合は、画面を横にしてご覧ください
椿説弓張月では、この女護島のことを「八郎島(はっちょうじま)」と呼ぶことにしたのが、訛って今の「八丈島」になったと、凄い事を書いています。
足利義康と朝稚
伊豆大島で流罪生活を送っている源為朝に対して、官軍が来襲する噂を聞きつけて一人の源氏(足利義康)が使者を為朝の元に遣わします。(為朝に仕えた鬼夜叉(東七郎三郎)に捕らえられる。)
子の居なかった足利義康は、足利家の断絶を食い止めるのと、為朝の武勇を継がせたいとのこと。その話に為朝は、次男「朝稚(ともわか)」を捨てる覚悟で養子にします。
こんな感じで、椿説弓張月では、足利義兼を源為朝の子という想定にしてしまいました(汗)
簓江===源為朝 足利義康-----┓
┗------|養子 |家臣
朝稚(足利義兼)-梁田二郎時員(主従関係&使者)
⋮
足利尊氏
※系図が崩れる場合は、画面を横にしてご覧ください
琉球ステージ
為朝、舜天、白縫姫、紀平治、他為朝に仕えた人々で船に乗って京を目指すも、嵐の為に流されて着いたところが琉球(沖縄)です。
荒れている琉球王国
この琉球ステージでは源為朝が登場しないシーンが長く、為朝に仕えているいろんな人物が死んだり、死んだと思ってたのに生きてたり、死んだはずの白縫姫の霊が乗り移るとか、ややこしい場面が出てきます。ここで離脱しないようにしたいものです。
┏--(甥)-利射(国相) 司馬順徳
| | |
利勇-(密通)-中婦君(王妃)===尚寧王=====廉夫人(並妃)
|
寧王女 ← 白縫姫の霊
↑
※並妃は第二夫人のこと 為朝・舜天手助け
※系図が崩れる場合は、画面を横にしてご覧ください
琉球では、ダメ国王(尚寧王)が利勇に良いように使われて国が荒れていました。(これは南総里見八犬伝と同じ感じですね)
そして、国王と延臣らが、国をさらに悪くする怪人を復活させてしまいます。
ラスボス曚雲登場
曚雲(もううん)は怪しい妖術を使う人物で、尚寧王がすっかりその妖術に騙されて惚れ込み、曚雲国師と尊称することに。臣下の人物も次々と退け、王も退け、自分が琉球国王を乗っ取ろうとします。
この辺で源為朝が再登場。
琉球王国の民らを救う為に、為朝と舜天らが悪者を退治し、為朝は天国へ旅立ち、舜天が琉球国王になって物語は終わります。
琉球ステージでは、沖縄本島のほぼすべてがゆかりの地になりますが、特に首里城は琉球王国の中心で、為朝や舜天はここにいる悪者に対して立ち向かっていきます。


椿説弓張月は、このように壮大な物語です。
琉球での話は作り話と思われるのですが、実際に源為朝ゆかりの地が残ってたりします。
本当に為朝が琉球に来たのかどうかは分かりませんが、妄想を膨らましたり、ゆかりの地を訪問したりしてより椿説弓張月を味わうのは楽しいですね。